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会津若松と喜多方が漆と芸術で伝える
「東北へのエール」

「東北へのエール」を掲げ、会津若松と喜多方で開催された「会津・漆の芸術祭2011」。福島県内外から集められたアートたちが、歴史と伝統ある街を彩った。
取材・文:編集部 写真:編集部

「島台月見桃源郷」三瀬夏之介。展示は末廣酒造内。

 江戸時代には城下町として栄え、現在も当時の歴史が色濃く残る会津若松と、「蔵とラーメンの街」として知られる喜多方。この、福島県を代表するふたつの地で、「芸術で人と地域を結びたい」と昨年、企画・開催されたのが「会津・漆の芸術祭」だった。
2度目となる今年のテーマは、「東北へのエール」。3月11日に起きた東日本大震災から、「復興への道筋を文化の力で照らしたい」と強いコンセプトを掲げた。開催が決定するまで震災の余波は大きく、一時は開催を見送られる可能性もあったが、「各地からのエールを会津で伝えたい」という主催者の強い意志は、開催決定前から全国へ発信される。
インターネット上で「東北へのエール」をテーマとした作品を募集。開催決定後の6月末までにかなりの数が集まった。そこから、展示作品の決定や会場の確保など様々な準備を急ピッチで進め、10月1日にようやく芸術祭の開催実現までこぎつけた。
 震災で失われた多くの命に捧げる鎮魂と再生への願いが込められた作品が約100点。それらが、酒蔵や古美術店、レストラン、カフェ、ホテルなどジャンルに富んだ38の施設で展示された。
 会津地域の伝統工芸・伝統産業である漆を冠する芸術祭ならではの、漆をテーマや素材にした作品は約70点。地域で活躍する作家や職人の作品も会場を彩った。

「はばたく」岩渕浩之。ホテルニューパレス。

 創業は嘉永3年(1850年)。150年以上の歴史を誇る「末廣酒造」では、アーティストたちの様々な作品を楽しめたことはもちろん、酒造りの工程も見学することができ、併設されているカフェで休憩をとることもできる。江戸情緒を漂わせる空間には風情があり、美術館とは異なった趣を感じさせた。

末廣酒造の外観。

「東北もののけ“面”プロジェクト」宇都宮大学松島研究室。末廣酒造内に展示。

「夢中の国」土屋多加史。

「わつなぎなうつわ」村上修一。末廣酒造内に展示。

 古美術店の「井上一夫商店」では、ユニークな演出が施されていた。店舗へ足を踏み入れると、そこは会津の歴史を想起させる古道具が陳列されている普段と変わらない空間。しかし、店内に設置されている階段をつたい上へ進むと、昔ながらの木造・土壁の部屋の中心にひとつの作品が展示されてある。現代美術家・小沢剛の作品は会津の漆職人とのコラボレーション作品であり、作家の義母の嫁入り箪笥などを使用したもの。「他人にとっては取るに足らない日用品の、持ち主にとってかけがえのない記憶と時間」を表現しているのだと、店主が人懐っこい笑顔で優しく説明してくれた。作品は1点だが、展示空間も含め、演出そのものがひとつの作品と言える。インスタレーションもまた、芸術祭の醍醐味のひとつでもあった。
 また今回は、漆を共通テーマとして開催した前回と違い、漆を扱わずとも「東北へのエール」をコンセプトとする作品も展示されていたことが大きな特徴でもあった。

作品は小沢 剛 「できるかな2010」本田充(伝統工芸士(蒔絵))とのコラボレーション作品。展示会場は「井上一夫商店」。

「井上一夫商店」の外観。

1階のようす。ところせましと古道具が並べられている。

 太郎焼総本舗では、アーティスト・日比野克彦の考案でスタートし、全国各地で活動する東日本大震災の復興支援プロジェクト「HEART MARK VIEWING」の会津地域での展開で生まれた作品が展示された。ワークショップで制作した気持ちを表すハートのアップリケを繋げたタペストリーを展示。
同作品を含め、芸術祭会場で見られた東北を元気づける約30点の現代アートに、訪れた観光客は感嘆の声を漏らした。
 伝統の漆塗りに先鋭的な作品。それらが、歴史的な建造物や街を代表する施設に展示される。歴史ある会津と喜多方のポテンシャルを十分に引き出した今年の会津・漆の芸術祭は、10人のスタッフと93組のアーティスト、会場を提供してくれた施設関係者、地域住民。そして何より、来場者なくして成功はありえなかっただろう。

太郎焼総本舗外観。

「HEART MARK ♥ VIEWING」HEART MARK VIEWING 福島

 イベント開催に尽力した、福島県立博物館学芸員の小林めぐみさんはこのように話す。
「震災や原発事故に対してどう向き合っていくかは、この先、何年も続く課題です。会津は、福島の他の地域に比べると(震災の被害が少なく済んだ分)まだ余力があります。会津が福島を支え続けていくことが必要です。元来観光地である会津若松・喜多方は県外との交流を持つ窓口としての役割を果たすことが可能です。これからも会津・漆の芸術祭は続けていきたい。ワークショップを定期的に開催するなど、街のみなさんで文化事業を生み出していきたいと考えています」

「キオクノタネ 2011/マツノツバサ 2011」いらはらみつみ。セイロンティーガーデン。

「幻月」渡邊希。うるしの布分。

 会津鶴ヶ城に飯盛山、御薬園など城下町の息遣いを肌で感じられる会津若松市に、全国的な知名度を誇る「喜多方ラーメン」がある喜多方市。歴史、伝統、自然、食文化……。観光地の宝庫でもあるこの地域と人とを結ぶ「会津・漆の芸術祭」は、来年ももちろん開催される。
 今度は、どのような演出で観光客を驚かせてくれるのか。今から楽しみだ。
会津・漆の芸術祭 http://www.aizu-artfest.gr.fks.ed.jp/

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