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300年の伝統を守り続ける張子人形の老舗
デコ屋鋪 大黒屋(郡山市)

約300年の歴史があるデコ屋鋪 大黒屋では、張子人形や三春駒など福島が誇る伝統工芸品のみならず、幅広い年代に愛されるオリジナルなど数多くの商品を作り続ける。
取材・文:田口元義 写真:本田 謙
デコ屋鋪 大黒屋

大黒屋の看板商品でもある三春張子は2,500〜6,000円。三春駒は1,000〜18,000円。ほか、ダルマなど商品ラインナップは豊富

指をほんの少し水で湿らせ糊をつけ、木型に巻かれた和紙に、さらに和紙を繋ぎ合わせていく。

「工房では、和紙を乾燥させるために夏場でもストーブを入れているんですよ」
職人の作業風景を眺めながら、デコ屋鋪 大黒屋の二十一代目・橋本彰一は工程を丁寧に解説してくれた。
郡山の市街地からほど近い高柴村にある集落では、元禄時代から約300年にわたり受け継がれている伝統工芸品がある。
張子人形——。
小さなものだと6枚程度。最も大きいサイズでは実に30枚。木型に合わせて、その枚数分の和紙が一気に張り合わされていく。和紙は良質なものだとコシがありすぎ、木型に張る際に柔軟性に欠けるため、あえて質感の粗いものを用いているのだという。
この粗さがまた、独特の手触り感を表現しているのだろう。木型に丹念に張り合わされた和紙を3日から4日間乾燥させ、表面を固くさせる作業が終わると、人型など複雑な形状をしている人形に関しては、その後、頭部や腕などを繋ぎ合わせる「取り組み」という作業を行う。
そして、「胡粉」という貝を砕いて粉状にした特殊な下地に塗り、染料、含量混ぜた塗料できめ細やかな装飾を施していく。
凛とした美しさがありながらも、躍動感も溢れる芸者、七福神といった縁起物。恫喝するかのごとく、睨みを利かせ厄を追い払うダルマなど、職人の手によって命を吹き込まれた張子人形が、大黒屋の店内に所狭しに並ぶ。
二十一代目は、今後、伝統を継承する「温故」だけではなく、オリジナル、つまり「知新」も全国に広げていきたいという。

デコ屋鋪 大黒屋

新たな「復興のシンボル」として売り出し中の腰振り虎は5,000円、7,500円、10,000円の3種類。首振り虎は5,000円

現在、子(ネズミ)に騙されて干支に入れなかった猫をモチーフとした「うっかりネコ」や、金運、健康、恋愛運など、それぞれに願掛けされた「豆ダルマ」など、新たな工芸品もラインナップされている。
「郡山市のキャラクターである『がくとくん』のひょっとこや企業のオリジナルキャラクターなど、特注品をどんどん受けていきたいと思っているんです。伝統の技を現在風にアレンジしていくことで、さらに認知度も高まると思いますしね」
デコ屋鋪 大黒屋もうひとつ忘れてはいけない伝統工芸品がある。それが、三春駒だ。
「日本三大駒」としても知られている三春駒の歴史は古い。約1200年前、風のごとく現れ、坂上田村麻呂の夷族討伐に多大な功績を果たしながら、直後に煙のように消えた100体の鞍馬。そのうち1体がこの地で発見されたことから、縁起物として伝えられるようになった。
原材料は重厚感のあるこうの木。逞しく削られた木型に古来の派手な馬具を絵付けし、大胆に表現しているのが三春駒の特徴である。色は黒と白の2色。黒駒は子供、白駒は年配者のお守りとして寵愛されている。
「三春駒は歴史が長いですし、お守りとして大勢の方たち愛されていますから、伝統をそのまま受け継いでいきたいです」

デコ屋鋪 大黒屋

デコ屋鋪 大黒屋の二十一代目を務める橋本彰一さん。伝統を継承するだけでなく、オリジナルを手掛けるなど創作意欲に満ちている

張子人形、三春駒と伝統工芸品の説明がひと通り終わると、二十一代目は虎の張子を優しく撫でながら、「これを復興のシンボルにしたいんですよ」と呟き、こう結んだ。
「戦時中、『帰巣本能に優れている』という習性から、虎の人形を戦地へ持っていった方が多いと聞かされています。今回の大震災で福島県民も多くのものを失いましたが、でも、必ず立ち直って見せる。そういう願いも込めて、虎の張子を縁起物として皆さんにお届けしていきたいんです」
先に起こった東日本大震災の影響で、デコ屋鋪 大黒屋に訪れる観光客も10分の1と激減した。
「うちに関していえば、人も建物も無事。お客さんが激減したのは風評被害の影響もあることはありますが、だからといって何もしなければ、何も始まらないんです。僕は、今回の災害は逆にチャンスだと思っています。これまで、福島の知名度がなかなか上がらなかったなかで、きっかけはよくありませんが世界から注目される都市になった。だから、それをうまく利用して、『福島の日本の力は伊達じゃないんだぞ』ということを、僕らが作る伝統工芸品で訴えかけていきたいんです」
催しなど自粛ムードが漂うなか、「だからこそ」と、二十一代目が発起人となり、7月7日から9日の期間で「復興祭」が開催された。
三春の張子が、駒が地元を復興させ、活性化を促す。
やはり、伝統の力は侮れない。

デコ屋鋪 大黒屋

デコ屋鋪 大黒屋 福島県郡山市西田町高柴字舘野163 TEL:024-981-1636 営業:9:00〜17:00 定休日:なし http://www.dekoyashiki-daikokuya.co.jp/

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