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集まれる場所 ~奉奠祭(ほうてんさい)花火大会~(いわき市久之浜)

2011.9.8 イベント
希望と復興を想い、自らの手で作り上げた "祭り"に込めた、主催者と住民たちの『集う場所』への情熱と力。
取材・文:編集部 写真:編集部
Starburst in Hisanohama

2000発の花火が久ノ浜の夜空を明るく照らし出す

福島県いわき市久之浜。この地にも東日本大震災の爪痕は、今も大きく刻まれている。

大津波により、一帯に軒を連ねていた家屋や商業施設、寺社仏閣など、あらゆる建築物が一瞬のうちに消え去った。確かにその場に存在していたことを証明するのは、そこかしこに山積みにされている瓦礫の山のみ。

repose of souls #1

積み上げた瓦礫の中、鎮魂の儀式が行われる。ここは流されてしまったがもともと神社のあった場所らしい。

repose of souls #2

空は高く、いつの間にか曇りだった天気は快晴に。粛々と儀式は続く。

無残な姿に変わり果てた街並みは変わらない。だが、太陽の光はそれまでと同じように辺りを明るく照らしてくれる。そして何より、その地には復興を心から願う人たちがいる。

「地元に残る住民はもちろん、他の地域に避難している人たち全員が故郷である久之浜に集まり、震災で命を落とした方の鎮魂、そして、復興への祈りを捧げるイベントを開催したかったんです」
実行委員を務めた高木優美は、8月27日に開催された「奉奠祭(ほうてんさい)花火大会」の意義について、そう力強く答えた。

Takagi

主催者の高木さん。イベント開催までのいきさつと地元への思いを熱く語ってくれました。

Motoyanagi-san

同じく主催者の本柳さん。3日間家に帰っていないという極度の疲労の中、イベント開催中も陣頭指揮をとっていた。

「奉奠」という言葉には、「捧げる」という意味が込められているという。

「口幅ったい言い方かもしれませんが、私はこの言葉を、“見えないものに対して気持ちを捧げる”と解釈しています。この祭典は、震災を通じて様々なものに自分たちの思いを捧げていきたい。そういった決意表明も含まれているんです」

高木の言葉にも熱がこもる。

奉奠祭花火大会は、彼と本柳真一のふたりが中心となり企画された。スポンサー探しからアーティストへの出演依頼、ボランティアスタッフの呼びかけ、出店の手配など、イベントの実現、成功を信じて東奔西走した。不慣れな作業ではあったが、地元住民をはじめ、東京のボランティアスタッフなど多くの人間が彼らの意思に賛同した。

sea of Hisanohama

穏やかな久之浜の海。祭りは海沿いの津波が飲み込み流された建物の跡地で行われた。

Chidlen in Hisanohama

手動のオルゴールに集まる子供たち。

イベント当日、そこはいつもと変わらない縁日の風景があった。焼きそばやたこ焼きのソースの香りが、ふわりふわりと周辺を漂う。夏の風情を感じ取り人が集まる。

祭囃子と同調するかのように、メインステージ前ではthe HIATUSの細見武士(ex.ELLLEGARDEN)のサウンドが人々をいざなう。普段、直に耳にすることができない都会的な調べは、そこにいる全ての者を魅了する。皆、何度も、何度もアンコールを求め、主役たちの期待に応える。薄暮に差し掛かる頃、歌い手は彼らに寂寥感を与えないよう気を配りながら、太陽が光を失う速度に合わせ、ギターの音色を海風と調和させていく……。

young people at the live

ライブを楽しむ若者たち。細見武士はこのひ2度のアンコールに答え、いわきの人々との再開を誓った。

House of Flower

ボランティアのイラストレーターが被災した家屋に描いた花の絵。解体までしばしの間、住民たちの心を和ませる。

 漆黒の闇が辺りを包み込むと、エンディングの花火が待っていた。
 大輪の花が絶え間なく久之浜を彩る。
 地上へ差し込む光が被災した民家を照らし出す。本来あるはずの家財道具は、全て波にさらわれたが、空っぽの家の前にテーブルを出して、ビールを飲みながら花火を眺めている。近くの者たちが、家族の温もりを感じ自然と隣に腰を据える。コミュニティの輪が広がっていく。

周りを見渡せば、マンションのベランダから色とりどりの花を観賞する者もいれば、住むことはできないが、新たな命を吹き込むかのように自宅の壁を撫でながら、あるいは、固く手を結んだ学生カップル、愛息を肩車する父親。その場にいる全ての人間が、笑みを浮かべながら色とりどりの花に見とれている。
 その一つひとつの表情に希望を感じた。まるで、復興を固く誓う無言の結束のように。

House of "Thank you"

津波の被害を受けた家屋。住民からの感謝のメッセージ。

girl on the sholder

夜になるにつれ、浴衣姿の人たちが多くなる。親子連れやカップルも笑顔で祭りに参加していた。

 奉奠祭花火大会のラストは、久之浜住民によるスピーチだった。
 一人ひとり鎮魂の意と復興への決意を語る。その度に、号令のように花火が打ちあがる。
 スピーチが終ると、再び大輪の花が上空に咲き乱れる。総数2000発。数に意味はない。だが、訪れた数千人の人々は、その一輪、一輪に確かな意味を感じ取ったに違いない。

「2000という数にこだわりはないんです。来年からは、例えば本当の意味での鎮魂を込めて、この地区で亡くなった人数と同じ63発でもいいんです。鎮魂と復興。その思いを忘れずに、毎年、この地に皆さんが来てくれるだけでいいんです」

 高木は、「ここに残る人、避難している人、これからここを出て行かなければならない人たち、全員が集まり、同じ場所で同じ方向を見つめる、そんなイベントがしたかったんです」と笑顔を見せる。

 大事なのは、自分たちの故郷・久之浜に元気を取り戻すこと。

「私たちは、この街にずっと住み続ける」
失ったものはあまりにも大きい。だが、この地には人がいる。
 この夏、彼らは「私たちはここにいます」と叫び、人々に光を与えた。そう、貰うのではなく与えたのだ。

光あるところに人は集まる。

来年も、久之浜の夜空に花が舞う。

reunion

あちこちで「久しぶり!」「元気だったかい?」の声と共に喜び合う住民たちの姿もあった。

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